オイラのオヤジ

オイラのオヤジはオイラにとってスーパーヒーローだった
カメラマンっていう職業はオイラにはとてもカッコ良く見えた。
那須で山岳撮影をしていて落雷に撃たれても
カメラを手放さず生きて帰ってきたような
武勇伝には事欠かない

オヤジは体力の化け物だった
日の出とともに畑に行き農家レベルの面積の畑仕事を終えてから
出社して、夜はジムに通う生活をしていた。
65歳になって今は本業は引退したけど
生活サイクルはたいして変わっていない
本業が無い分、一日のほとんどをジムで過ごしている。
コドモの頃は病弱で運動音痴の虚弱児だったオイラには
オヤジは高くそびえ立つ壁だった

オヤジは恐ろしいほど若い
68歳という実年齢を当てられる人はおそらく居ない
50歳ぐらいにしか見えないので
初対面の年下によくタメ口を使われている・・・

オヤジはスキーのバッジテストで2級を持っていて
一眼レフのカメラのファインダーを覗きながら
山頂から滑り降りてくるなんて朝飯前だった

そんなオヤジも還暦を過ぎてから
衰えが見えるようになってきた
ガンとの闘病生活をした事もあったし
交通事故で過失致死事件を起こしてしまい
留置場に入ってしまった事もあった
それでもオヤジは自力で帰って来た
とはいえ衰えたオヤジを見るのはツライ

オヤジから連絡があり携帯電話の契約を変更したいと相談された
戸籍上の親子関係が証明できれば
住所が違っても家族割が適用されるという事だった
ついでに料金プランの見直しをしたいらしい
無料通話分のポイントを家族で分け合える「分け合いコース」と
翌月以降も繰り越せる「繰り越しコース」から選択するのだが
家族割の適用範囲が広がるので「分け合いコース」に変えたいらしい

オヤジはショップのカウンターでお姉さんに
家族契約の変更をして料金プランを
「訳ありコースに変更してください」
と言った・・・

ウチは訳あり家族かよ！